海外生活のお話 -ロンドンでの仕事経験-
伊藤 瑞穂
皆様こんにちは。カエル・クリニック・デザイン(KCD)デザイナー/一級建築士の伊藤です。
以前自己紹介でも少し触れておりましたが、私は海外でインテリアアーキテクトとしての勤務経験があり、ちょうど10年前にロンドンから帰国しました。
ロンドン滞在期間は約3年半でした。
会社からの海外勤務令が出た訳ではなく自発的に渡英したのですが、イギリスには親戚も友人もおらず、家探しも職探しも全くのゼロからの始まりでした。
ではなぜそれでもロンドンへ行ったのか。
色々と語り出すと長くなりそうなので、今回はお仕事関係のお話に限定して振り返らせて頂きます。
ロンドンでの仕事生活のはじまり
ロンドンへ渡ってすぐに現地の設計デザイン会社に色々応募したのですが、当時まだイギリスでの勤務歴がなくネイティブほどの英語力に全く及ばなかった私は、結局まずはかつて日本で働いたことのあるオフィスデザイン会社のロンドン支店に就職することにしました。
そこではパートでの雇用だったためお給料が安く、何か追加でアルバイトをする必要がある状況でした。
そこで思いついたのが日系不動産会社が取り扱う物件の平面図作りでした。
日本の感覚では物件探しの際に間取りの平面図がないことは考えられないのですが、自分がロンドンで部屋探しをした際にはビジュアルの情報が写真しかなかったことを思い出してのことでした。
1件につき◯ポンドでレイアウトを作ります、と掲げ募集がないところへも売り込み、積極的な姿勢が功を奏しお仕事を頂くこととなりました。
一般的な物件案内としてもあるに越したことはない図面レイアウト情報ですが、特に日本企業が駐在員用に契約する場合、きちんと物件の面積が分かる資料、更に北がどちら向きなのかという情報が入っていることが非常に重宝されました。
平日はオフィスデザイン会社で働いていたので、アルバイトとして土曜日に物件を採寸し日曜日に図面化する、という休みゼロ生活へ。
ただ、日本のアパート・マンションとはまるで違う間取りの高級物件を多く見ることができ、非常に楽しいアルバイトとなりました。
イギリスならではの物件事情
広いお屋敷にある小さな小さなメイド室や、テレビに出てくるようなだだっ広いキッチン。
ノッティング・ヒルの恋人(1999年のイギリス映画)に出てきたような雰囲気の家など、どの案件も興味深い物件との出会いがありました。
私が見てきた中で最も家賃が高かったのは40万円程度・・・それも週に!!イギリスの家賃表記は週単位なのです。
イギリスでは新築のビルよりも古い家の方がずっと価値があり家賃も高い、という日本とは全く異なる価値基準も存在します。
さらに10年前のロンドンは家賃の上昇が激しく、物件を持っていればその価格の上昇は平均的なサラリーマンの年収を上回るという記事が載ったこともありました。
海外の投資家が物件に投資だけして結局住民はほぼいない新しいビルだったり、築150年以上過ぎているタウンハウスなど、今もはっきり覚えています。
日本への帰国を決めたとき、アルバイトで書き溜めたイギリスの家の間取りを本にまとめたいという思いがありました。
しかしお金を頂いて書いたレイアウトは私が勝手に世に出せるものではないのかなと思い直し、今も私のUSBに眠ったままです。
いつかまた機会がありましたら他のレイアウトもお見せいたしますね。
デザイナー/一級建築士
伊藤 瑞穂